萬屋ドラム教室 "Keep Swing": 2012/02

2012/02/18

ジャズ講座4:ハーフタイムフィール

ジャズ講座の4回目の今回は、ハーフタイムフィールについて説明します。

以下どうでも良い事だと思いながらも、 ハーフタイムフィールは人によって言い方が様々なので、まず最初に本稿で使う用語を明確にしておきます。

ハーフタイムフィールは例えば2ビート、2フィールと言う事もできます。また、去年 Gregory Hutchinson を教室のスタジオへ招いてクリニックを開催した時、グレッグは Two step という言い方をしていました。また、ハーフタイムフィールと対になるレギュラータイムフィールも、4ビート、4フィールと言う事もできるし、もっと簡単に "スイング" でも意味は通じるでしょう。とりあえず、本稿ではハーフタイムとレギュラータイムに用語を統一して話を進めていきます。

ジャズの基本は言うまでもなく4ビートで、それを定義しているのはベースが演奏している4分音符のベースラインです。これは実は重要なところですが、今は話が脱線してしまうので、後日改めて説明します。さらに余談ですが、このベースの4分音符のラインをウォーキングベースと言います。言葉の通り歩く様なフィールという意味です。ハーフタイムフィールとは、ベースが4分音符の半分の2分音符でラインを弾く事を言います。ジャズではテーマを演奏する時にハーフタイムが良く演奏されます。

ハーフタイムのわかりやすい例として、教室で実際にレッスンの時に掛けている曲をご紹介します。
  • John Coltrane のアルバム Soul Trane から Good Baite - これは AABA の曲で A をハーフタイム、B をレギュラータイムで演奏しています。AABA の典型的な演奏の仕方です。
  • Kenny Dorham のアルバム Quiet Kenny から Mack the knife - ABAB のテーマを通してハーフタイムで演奏しています。ABAB の曲はこの曲の様に通してハーフタイムで演奏するか、通してレギュラータイムで演奏する事が多い様に思います。実はこの記事を書くに当たって、A をハーフタイム、B をレギュラータイムで演奏している ABAB の曲を探してみましたが、パッと思いつきませんでした。
YouTube で検索すればどちらも聴く事ができるので、是非聴いてみて下さい。すごく簡単な事なので、聴いてみればすぐに理解出来ると思います。

2012/02/14

ジャズ講座3:曲のフォーム

ドラマーのためのジャズ講座。3回目の今回は前回の補足で曲のフォームについて説明します。

ビバップでよく演奏される曲は、12小節のブルースを除くと、多くの曲が32小節です。その32小節を8小節ずつ4つのセクションに分けて、曲の構成を AABA や ABAB 等のフォームで分類します。ちなみに、前回リードシートを載せた枯れ葉のフォームは AABC です。

これは例えば英語の語順を SVO 等と分類するのと似ていて、実際の演奏には直接関係がない様に感じるかもしれません。しかし、曲をフォームで捉えておくクセがつくと、―まあ抽象的な表現ですが―、ジャズをより理解しやすくなります。

前回お話した通り、ドラマーはメロディーとコードを覚える必要がありません。しかしだからといって、曲の構成も分からずにただビートを叩くだけでは音楽的な演奏をする事ができません。前回からの繰り返しになりますが、とにかくテーマを繰り返して何度も聴きましょう。そしてメロディーと一緒に曲のフォームも覚えて下さい。

以下、思いつくままにいくつかの有名な曲をフォームで分類します。ジャムセッションでも定番の曲ばかりなので、是非実際に聴いて参考にして下さい。

AABA
  • There is no grater love
  • Bye bye blackbird
  • Satin doll
  • I got rhythm
  • On the sunny side of the street
  • Woody 'n' you
  • What is this thing called love
  • Candy
  • Confirmation
ABAB
  • If I were bell
  • I could write a book
  • You are my everything
  • It could happen to you
  • There will never be another you
  • On the green dolphin street
  • All of you
  • Mack the knife
  • Four
12小節のブルース
  • Now's the time
  • Au privave
  • Big foot
  • Blue monk
  • Straight no chaser
  • C jam blues
  • Cool struttin'
変則的なフォームの曲

  • All the things you are - 36小節。AABA だが最後の A が4小節延長されている
  • The surrey with fringe on top - 同上
  • East of the sun - 36小節。ABAB だが最後の B が4小節延長されている 
  • Alone together - 44小節。大雑把に捉えて AABA だが、最初の2回の A が14小節 (8+6)、B が8小節、最後のA が8小節というかなり変則的なフォーム
  • Moment notice -  38小節。 ABAB だが最後の B が14小節 (6+8)。最後の8小節では必ず決めが入るので、ロストが許されない曲。
  • Yes or no - 58小節。 Aが14小節 (8+6)、Bが16小節の AABA
12小節のブルースや32小節の曲だったら、難しいことを考えなくても感覚でなんとかなります。しかし、感覚だけに頼っていると変則フォームの曲をロストせずに演奏するのはかなり難しいでしょう。何度もくどい様ですが、テーマのメロディーとフォームを覚えるまでとにかく何度も何度も聴きましょう。そして、たくさんのCDを聴いて色々な曲を覚えましょう。

2012/02/11

ジャズ講座2:テーマ

ドラマーのためのジャズ講座2回目の今回は、少しずつ実践的な話に入って行きます。

まず最初にお断りしておきます。一口にジャズと言っても、ルイ・アームストロングの20年代から現代までに様々なスタイルがあり、それらを一括りにして説明する事は出来ません。このシリーズでは、ビバップ(ハードバップも含む)と言われる40年代後半から50年代中頃までのジャズを念頭において話を進めていきます。

実際のジャムセッションやライブでは、下の様な譜面を見て演奏する事がほとんどです。ちなみに下は有名なスタンダード「枯れ葉」の譜面です。


この様な譜面をリードシートと言って、リードシートを集めた曲集をフェイクブックと言います。ジャズの演奏は一曲が非常に長いので、たった1ページだけの短い譜面を意外に思う方もいるのではと思います。

上の譜面が何を提示しているかと言うと、テーマと言われる曲のメロディーとコード進行です。通常曲の始めにリードシートのメロディーを1回演奏して、それから各楽器のソロに入り、最後にもう一度メロディーを演奏して終わります。

ソロに入ってから一体何をやっているかと言うと、上のコード進行をずーっと繰り返しているだけです。だからピアノとベースはリードシートのコード進行に沿って、コードで伴奏(コンピング)したりベースラインを作っている訳です。

で、ソリストはと言うと、そのコード進行に沿って即興演奏(インプロビゼーション)しているのです。つまり、ここが重要なポイントですが、ジャズとは簡単に言ってしまえば繰り返される原曲(テーマ)のコード進行に基づいた即興演奏なんです。

メロディーやコードが楽器の演奏に直接は関係ないドラマーの皆さんに、いきなりハーモニー等の音楽理論をしっかり勉強しなくちゃイカン!等と言うつもりはありません。では何をすれば良いかと言えば、まずテーマを口ずさめる様になるまで何度も何度も聴いて下さい。そしてそれが出来る様になったら、一曲を通して聴きながら、頭の中でテーマをずーっと歌い続けて下さい。もしピアノやギターでメロディーを演奏できてしまう人は、もちろん楽器を使って構いません。

この訓練を繰り返して行くうちに、ピアノのコードとベースラインから、テーマのメロディーが聴こえて来る様になれば大成功です。この域に達する事ができれば(ってそんなに大げさな物ではないけど‥)理論としてハーモニーを理解していなくても、感覚としてハーモニーを感じ取れていると言う事が出来ます。

そうなればソリストの後ろでビートをキープしながら、今曲のどこを演奏しているのかが分かる様になります。実を言うと枯れ葉の様な32小節のテーマの場合、大体感覚で曲の頭など構成が分かってしまうでしょう。しかし、少し変則的な小節数の曲や、毎回同じ所でブレークやキメの入る曲の場合は、演奏中に今どこを演奏しているか追えていないとブレークやキメを入れる場所が分からなくなってしまいます。この状態をロスト、または落ちたと言いますが、まずは曲からロストしなくなる事を目標にCDを聴いてみて下さい。

教室のウェブサイトも合わせてよろしくお願いします。


2012/02/04

ドラマーのためのジャズ講座:はじめに

以前から公開している、ドラム初心者の方のための教則的な内容を、こちらのブログに移設する作業を先にやってしまいたいと思いながらも、昔の記事をいじるのでは中々モチベーションがあがらないので、新たなシリーズを始める事にしました。

大げさなタイトルですが、ジャズを全くやった事が無いドラマーの方に、ジャズを演奏するために最低限理解しておきたい事を説明して行きます。

私事になりますが、私がジャズを叩きたいと思ったのは高校生の頃でした。最初ドラムを始めた頃は、その当時流行っていた Guns & Roses 等のコピーバンドをやっていました。しかし周囲の影響もあって、そこから次第にルーツを遡る様になり、Aearo Smith, AC/DC, Led Zeppelin, Rolling Stones, Beatles, Animals 等を聴く様になりました。Rolling Stone, Beatles, Animals を聴いているうちに、更にそのルーツであるCuck Berry, Littel Richard, Ray Charles 等、いわゆるオールディーズと呼ばれている音楽を聴く様になりました。

上記の通りシンプルな音楽ばかり聴いていので、ドラムを始たビギナーの頃から、自己流の耳コピでだいたいなんとかなってきました。しか50年代の録音を聞いた時に、ロックドラムの叩き方では雰囲気やニュアンスを全く表現できない事に衝撃を受けて、一気にオールディーズにのめり込んでしまいました。聴いて行くうちに、この頃の音楽はドラムのビートがジャズの4ビートでスイングしている事に気づき、ジャズを聴く様になりました。更に、その後 Philly Joe Jones を聞いたのが自分にとっては決定的で、レッスンを受けてルーディメンツの練習を始めたり、本格的にドラムを練習する様になりました。

ジャズを聴き始めた当時、私のジャズに関する印象は以下のような物でした。
  • まずテーマと言われる最初のメロディーは聴きやすくて覚えやすい。スタンダードと言われる曲は、どこかで聴いた事がある曲もある。
  • テーマが終わると管楽器(例えばトランペット)が長々とソロを吹く。場合によっては2〜3分。理解しようと思って一生懸命聴くけど、それまでポップロックでせいぜい3〜4分くらいの曲しか聞き慣れていないから、とても集中力が続かず飽きる。
  • 頭がボーッとして来た頃、ようやく最初のソロ(上の例ではトランペット)が終わった。と思ったのもつかの間、すぐに次の楽器(例えばサックス)が同じ様に長〜いソロを吹く。もう次第に意識がもうろうとして来て音楽には全く集中できていない。
  • やっと2番目のソロ(上の例ではサックス)が終わったと思ったら次はピアノ。CDを止めようか迷うけど、なけなしの小遣いで買ったCDだしとりあえず最後まで聴かなきゃ、と我慢。
  • やっと終わった?と思えば今度は、な.な.なんとベースソロ!? 勘弁してくれ〜、もう睡魔に勝てません。
  • うつろうつろしていると、突然トランペットがっ!と思いきや突然ドラムソロ!!一気に目が覚めます。
  • どういう仕組みか分からないけど、短いドラムソロを何回かやったら最初のテーマのメロディーに戻ってお終い。
実際教室でジャズドラムをやりたいと思っている方々と最初にお話してみると、ほとんどの方が私の高校生の頃と同じ様な状態です。もちろん、楽器を演奏しないでリスナーとして楽しむのであれば、「何となく雰囲気が好きだから」でなんら問題ありません。しかし、ジャズを練習して、他の楽器とセッションするためには最低限理解しておきたいポイントがいくつかあります。

そんな事をこれからしばらく説明して行きたいと思っています。また、楽器を一切演奏しないジャズファンの方も、いくつかポイントを理解していると、聴いた時の楽しみが100倍(?)になること請け合いです。

次回以降に乞うご期待!(って掛け声倒れにならない様にがんばります!)

教室のウェブサイトも合わせてよろしくお願いします。

2012/02/01

Mister Rudiments

前々からブログに動画を載せてみたいと思っていて、去年の春頃に Handy Video Recorder Q3HD を買ったものの、ほとんど使わないまま放置していました。このブログを開設したのを機に改めて動画を撮ってみようと思い、Q3HD にもようやく出番が回ってきました。You Tube のアカウントも、同じ頃に開設したものに今回初めて動画をアップしました。まずはとりあえず、テストを兼ねてブログに動画を貼ってみます。

記念すべき動画第一弾はルーディメンツのスネアソロです。N.A.R.D と言うマーチのスネアソロ曲集に入っている曲で、タイトルはずばり "Mister Rudiments" です。

ルーディメンツと言うのは、簡単に言ってしまえばマーチを叩くために必要とされているスネアのテクニックです。音大の打楽器科の入試でも、多くの大学でルーディメンツの基礎打ちやスネアソロが課題になっていて、すべての打楽器奏者にとって最も重要な基礎とされています。

今日アップする動画の曲は、典型的なマーチのスネアソロで、まさにルーディメンツのスネアソロ、と言った感じの曲です。初めて動画を録画してブログにアップすると言う事で気合いが入りすぎて空回りしてしまいました(汗)つまったりしている箇所もあるので、後日取り直して動画は差し替えたいなと思っています。



教室のウェブサイトも是非併せてご覧下さい。
http://www.yrzmusic.com/drums/
N.A.R.D. ドラム・ソロ/ラディック社スネア・ドラム教本